平戸祐介は会うたびに力強くなっていく気がする。初めて会った時の遠慮しがちに話をする様子からは想像できないほど、自分のやっているジャズに自信がみなぎっている、そんな印象を受ける。ハードバップやワルツ、4ビートをジャズだ!と盲信するジャズマニアにはわからない境地。自身初となるソロアルバム「Speak own words」を来年早々リリース、その新作について話を聞きました。
今回アルバムについて教えてください。
平戸:レーベルからソロアルバムの打診があり、このアルバムのために曲作りをしました。年間約120本のライヴをやっているのですが、いろいろなミュージシャンと演奏することでインスピレーションを受けている部分もあり、NY時代、学生の頃にセッションをやっていた経験というのかな、そういうものがそのまま閉じ込められている感じです。
アルバム制作にあたってはオーディエンスを突き放したくない、これはquasimodeでも一緒なんですが、そういう意識がありました。ライヴに足を運んでくれるファンに楽しんでもらいたいということを意識しました。
いろいろなタイプの音楽が収録されていますが、ジャズは僕の中心です。でもそれは一般的に言われているハードバップなどのスタンダードなジャズではないでしょうね。ジャズは常に化学反応を起こし、分裂して、また融合してきたという歴史があります。ジャズだからといって、ハードバップをやる必要はない。あれは50年代のヒップなフォーマットだったけれど、オールドスクールすぎる。このアルバムは僕が考えるジャズそのものです。
カバー曲についても僕が考えるジャズというものにフィットするような楽曲を選んだつもりです。旧態依然な感じの音楽ではないものですね。伝統芸能音楽的なジャズは自分はやらなくていいかなと思います。もちろん演奏するのは好きですよ。例えば「A列車やろうよ」って感じで、ジャムセッション的な感じで演奏するのは楽しい。だけど、作品として残すことやおおっぴろげにジャズコンサートとかやることは興味がない。
でも、大金を積まれてスタンダードなジャズを演奏してくれと言われたらどうします?
平戸:大金!? それだったらやるかなー。生活は大事ですからねぇ(爆笑)
でも、そういうオーダーをする人は僕の演奏を気に入らないと思うな。演奏したとしても、納得してくれない気がします。
最近いろんな音楽を聴いているんですよね。中でもレゲエをよく聴いています。
Monty AlexanderとEarnest Ranglin、Sly & Robbieのジャマイカンジャズを先日観に行ったんですが、とても感動しました。でも、生粋のジャズファンからすると、ジャズではないと思うでしょうね。NHKで先日放送されたMiles Davisのライヴですが、あれもジャズとは言わないと思う。
アルバムタイトルについて教えてください。
平戸:ジャズは絶対に自分で伝えることが大切な音楽。自分自身のメッセージを届けたいと思って付けたタイトルです。NYで感じた、ジャズはどうあるべきものか?ということやバンドを通じて培ったものとかそういうものを表現したかったんです。ジャズは自分の技量を見せる音楽だけど、例えば、一緒にやっているミュージシャンが想像しているものと違う演奏を自分がした場合に、そのイメージの沿う形で演奏することも大事なんだけど、自分も忘れてはならいない、自分自身の気持ちを演奏に乗せることが大切なんです。
quasimodeのアルバム「Magic ensamble」に収録されているNo more sadnessが再録されています。
平戸:震災直後のライヴでソロで演奏していたのですが、ライヴに来た人がその時の事を思い出して欲しくて再録しました。絶対に忘れてはならないことだと思うんです。だから収録しました。
震災直後は音楽やっていること自体が罪悪感のように自分に重くのしかかっていたんです。自分は必要とされているのだろうか?と真剣に考えたこともありました。でもquasimodeのツアーで最後、東北に行った時に、みんなが音楽を求めてくれているんだなとわかったことがうれしかったし、被災された方に逆にパワーをもらった気がしました。
ところで、共演したいミュージシャンはいらっしゃいますか?
平戸:渡辺貞夫さんですね。ジャズを始めたころ好きになったアルバムがナベサダさんのアルバムだったんですよ。
最後にリスナーにメッセージを
平戸:今回のソロアルバムは一匹狼でやってきたソロピアニストとしての経験、quasimodeで培った経験が凝縮されているアルバムです。平戸祐介そのものを表現した作品なので、是非みなさんに聴いていただいて、ライヴに足を運んでもらいたいです。最近は若い人以外にも年配の方もいらっしゃってくださっているので、是非足を運んでください。1月29日はBLUE NOTE 東京でソロライヴがあります。ご期待ください!
アルバムのオープニングは静かな、いわゆるスタンダードなジャズナンバーで始まりますが、曲を追うごとにアブストラクトヒップホップ、ダンスクラシックカバー、NU DISCOとジャズとは全くかけ離れた音楽に突入していきます。彼の会う時に尋ねることで決めていたことは、「何がジャズなのか?」ということでした。
「旧態依然としたジャズは伝統芸能音楽」とばっさり切り捨てる、彼が考えるジャズ観が少しでも伝えられたのであればうれしいです。
平戸祐介/Speak Own Words
収録曲
01. Taxi Driver Theme
02. 生まれたてのメロディ feat. bird
03. I'm In Love
04. Against The Invisible Wall feat. Tomoki Seto(Cradle Orchestra)
05. And Far Away
06. A House Is Not A Home feat. 元晴(Soil&“Pimp”Sessions)
07. Down To The South
08. Love Will Bring Us Back Together Feat. mabanua
09. Spectrum
10. No More Sadness(Solo Piano Version)
11. Music feat. 畠山美由紀
12. Love Is A Losing Game
<参加ミュージシャン>
■バンド
Drums:藤井伸昭(Sleep Walker)
Bass:工藤精
■トラックメイカー
Tomoki Seto(Cradle Orchestra)
mabanua
■ゲストアーティスト
畠山美由紀、bird、元晴(Soil&“Pimp”Sessions)
平戸祐介特設サイト